感染症に明るい医学博士
藤田医科大学 吉田 友昭 教授が
吉田 友昭 教授
藤田医科大学(愛知県豊明市) 医学部 生物学 教授。感染症に詳しい医学博士。専門は免疫学だが、近年は生物学教育を通して基礎学力の育成に衷心している。「マンガから拾い読みする生物学」(2020年刊 デザインエッグ社)著者

スモークテストで解ったカラオケボックスでクラスターが発生しない理由

カラオケボックスでクラスターは発生していない

いろんなニュースでカラオケ店でのクラスターのニュースが話題になっています。最近では石川県や富山県でもありました。
歌う時は喋る時の5~6倍の飛沫を放出するので、歌うと危険だと容易に想像できます。しかし良く思い出してください。クラスターはカラオケ喫茶などで発生していて、カラオケボックスでクラスターは発生してないんです。第一波の時も今回の第二波においてもありません。
なぜでしょう。高齢者が利用するから?そんなことはありません。実は、建物としての構造や規格に大きな違いがありました。特に、建築基準法が規制している換気速度、空気を入れ換える速度の基準が重要な役割を果たしていると考えられます。法的に、窓の面積が広ければ機械による換気速度、つまり換気扇の力がそんなに強くなくても許されるようになっています。一方で、窓が開かないようなビルの場合には、かなり強力な換気装備がもともと要求されているわけです。

法的基準の3~4.5倍。良好な換気が理由

カラオケ喫茶はもともと喫茶店ですから、窓を開けて換気できる建物であり、必然的に換気扇に要求される能力は小さくていいわけです。それなのに騒音による近所迷惑を考えると窓を閉めることになるので、どうしても閉鎖空間になって十分な換気ができない。一方でカラオケボックスはというと、防音のために壁ばかりで窓が無く、いかにも密室と思われますが、そういう構造だからこそ、建築基準法でかなりの換気を要求します。そのうえ、実際のカラオケボッスの場合には、更に強い換気を実現しています。つまり、通常の法的基準の大雑把にいって3~4.5倍、新幹線並みの非常に速い速度での換気が実現されています。それは、食事の臭いなどを次の利用者に感じさせないようにすることが理由だったようですが、この良好な換気がカラオケボックスでクラスターが発生していない非常に大きな理由と考えられます。

コロナのクラスター予防は換気が最も重要

視点をかえて、接触感染を防ぐ対策についてカラオケボックスが優れているかというと、際立ってそういうわけではありません。むしろカラオケ喫茶の方が神経質になってアルコール消毒を一生懸命やっているかもしれません。その辺の具体的実態は分かりませんが、実際にクラスターが発生したカラオケ喫茶で「こんな一生懸命対策をしていたのにどうしてクラスターになったのだろう」と仰っていたところもあるようです。
といったことから、コロナのクラスター予防には、とかく見落とされがちな「エアロゾル」、小さな飛沫ですね、それを排除するための換気がどのくらいされているか、ということが非常に重要であることになります。カラオケボックスでの換気の実態を、スモークテストで確認した動画をご覧ください。

部屋の中の空気の完全交換は6分程度

給排気、換気のシステムが回っていない時は、スモークがほとんど止まって動かないですが、給排気システムが動きはじめると、”ビュン”というほどではないが、ゆっくり確実に排気口に向かって煙が流れていく。そこにエアコンの風がかぶると上から降りてきた風が床にあたって上昇気流を作り、多少渦を巻きながらも、結果的に非常に早い速度の上昇気流がおきて、スモークが毎秒20~40cmの速さで舞い上がっていた。
こういった空気の流れの速度が、クラスターがおきにくい非常に大きな要因であることが推察される。設計上、部屋の中の空気の完全交換は4分くらいだが、実際に充満した煙の消失時間は6分程度だった。しかしこれは新幹線で行われているような、かなり速い換気と同等だということであり、安全だということが出来る。

優れた給排気システム。新幹線並みの換気能力が感染を防止
カラオケボックスは安全

製作・監修 吉田 友昭
撮影協力/ビッグエコー名駅笹島交差点前店、JOYSOUND名駅三丁目店
作成・公開/2020年09月07日